いつもブログをみていただき、ありがとうございます。
Nextep labo代表の濱田です。
今回は、「急性期で遭遇する痛み」をテーマにお伝えしていきます。
急性期では手術後まもない方々が非常に多いため、
「痛み」に頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか?
今回は、急性期で遭遇する痛みの特徴について解説しながら、その対策方法をお伝えしていきます。
Contents(目次)
急性期での痛みとは?
まずは、「痛み」について簡単に説明をしていきます。
【国際疼痛学会(IASP)】
「痛みとは、実際に何らかの組織損傷が起こった時、あるいは組織損傷が起こりそうな時、あるいはそのような損傷の際に表現されるような、不快な感覚体験および情動体験」
と定義付けています。
僕は、定義はすごく大切だと思っていますが、分かりにくいと思ってしまいます。
この定義を分解していくと、
● 組織損傷に起因する「急性痛」がある
● 損傷と因果関係のない「慢性痛」がある
● 「感覚的・情動的・認知的」側面がある
と考えられます。
急性期における痛みの大半は、①「組織損傷に起因する急性痛」だと思います。
そのため、どのような組織損傷を呈したために、身体に変化が起きているのかを考える必要があります。
急性期で生じる組織損傷とは?
では、どのような組織損傷があるでしょうか?
● 受傷による損傷(骨折・軟部組織損傷)
● 手術による損傷
加えて、組織損傷・治癒過程における「炎症」があると思います。
炎症に関しては、「炎症って悪者呼ばわりされてませんか?」をご確認下さい!
急性痛はどのように生じるのか?
まずは、損傷によってどのように痛みが生じるのかを考えていきましょう!

痛みは、受容器を介して後根(感覚神経)を介して、脊髄後角へと入力され、脊髄視床路として上行していきます。
つまり、損傷・炎症によって受容器が刺激されると痛みが生じるということです。
【受容器の特徴】
大きく分けると2つの受容器があります。

< 高閾値侵害受容器 >
● 機械刺激(刺す・切る・伸ばす・押すなど)にのみ反応する
● 強い刺激(侵害性)に反応して発火
● 弱い刺激(非侵害性)には反応しない
< ポリモーダル受容器 >
● 機械刺激、熱刺激(温・冷)、化学刺激(疼痛物質)に反応
● 強い、弱いなどの幅広い刺激に反応する
● 刺激強度に伴って興奮性を増す
などの特徴があります。
【1次侵害受容ニューロンの特徴】
主に痛みを伝える神経は、2つ存在します。

<Aδ神経>
● 直径5μm以下、伝導速度30m/s以下の細径有髄神経
● 深部組織の高閾値侵害受容器、皮膚表面のポリモーダル受容器と繋がる
● 一次痛(fast pain、鋭痛、チクッとした痛み)に関与する
<C神経>
● 直径1.5μm以下、伝導速度2m/s以下の無髄神経
● ポリモーダル受容器と繋がる
● 二次痛(slow pain、鈍痛、ズーンとした痛み)に関与する
【2次侵害受容ニューロンの特徴】
主に2つの種類があります。

NSニューロンは「1次痛」に関与し、WDRニューロンは「2次痛」に関与します。
また、WDRニューロンは、「wind-up現象」を起こします。
【wind-up現象】
= 繰り返される痛み刺激によって、感受性が増大していく現象
【脊髄視床路の特徴】
大きく分けて2つの特徴があります。

外側系の特徴としては、「識別性が高い」ことが挙げられます。
そのため、「痛みの部位」が明確に判断できることが多いです。
内側系の特徴としては、扁桃体・海馬などに関与するため「痛みの意味付け」などの、感情面に関与します。
また、視床下部にもつながっていくため、自律神経症状(血圧上昇・頻脈・冷汗・顔面蒼白)なども生じます。
以上の流れをまとめると、急性痛への関与は、
● 外側脊髄視床路
● 高閾値侵害受容器
● Aδ繊維
● NS(特異的侵害受容)ニューロン
などが挙げられます。
そのため、痛みの特徴としては、
● 1次痛で速く鋭い痛み(チクッ)
● 痛みの部位が明確(finger sign:指1本で部位を示せる)
● 動かす刺激によって痛みが出現してくる
などが挙げられます。
そのため、損傷した組織への「機械刺激の量を調節」することで、
痛みの程度を抑えることが可能となります。
炎症による痛みとは?
では、組織損傷による機械刺激のほかに、炎症はどのような痛みの原因・特徴があるのでしょうか?
組織損傷に伴って、治癒を行うため炎症が生じます。
その結果、「炎症性メディエーター」呼ばれる化学物質が発生します。

これらの作用により、「血管拡張」や「血管壁の透過性亢進」などが生じることで、組織治癒に貢献していきます。
しかし、同時に「発痛物質」や「疼痛増強物質」としての役割も担うため、「炎症性疼痛」が出現します。
これらの物質は、「血液循環障害」によってさらに増大するとされています。
炎症性疼痛の特徴として、
● 内側脊髄視床路を介すため、ポリモーダル受容器やC線維、WDRニューロンが関与する
● 2次痛で遅く鈍い(ズーン、ジンジン)
● 痛みの部位がぼんやり(area sign、palm sign)
● 腫脹によって組織内圧が高まった伸張刺激によっても痛む
● 循環障害によりさらに痛む
などの特徴があります。
そのため、「炎症を抑えたり」、「循環を改善させる」などの対策が必要になってきます。
まとめ
① 急性痛には、「組織損傷」と「炎症」による影響が関与する
② 組織損傷は、損傷部位に対する「機械刺激の程度」によって痛みが変化する
③ 炎症性疼痛は、「炎症の程度」と「循環障害」によって痛みが変化する
おわりに
いかがでしたか?
痛みにも種類があり、それぞれに特徴があります。
これらの特徴を理解することが、術後ケアの第1歩になってきます。
ぜひ、痛みについて学びを深めていただき、質の高い術後ケアをしていただければ幸いです。
今回の内容が、皆さんの「急性期での痛みの理解と対策」にとって、
「Nextep(次なる1歩を踏み出す)」
となっていけば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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濱田 聖矢(はまやん)
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